History / 竹島 「日本領域参考図」 1951年10月22日     第12回国会衆議院  平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 資料

「日本領域参考図」は1951年10月22日の第12回国会衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会で質疑応答の対象となった地図である。この地図にあるのはマッカーサーラインであり、日本漁船の操業許可区域を示すために点線を引いていると政府説明が行われている。

「日本領域参考図」 1951年10月22日   第12回国会衆議院  平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 資料

「日本領域参考図」 国立国会図書館所蔵 芦田均関係文書(寄託) 380-18 を公開する。

 

「日本領域参考図」は1951年10月22日の第12回国会 衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会において、参考資料として委員に配布された地図です。この特別委員会において、この地図に引いてある「点線」について山本利寿議員が質問し、政府がこの地図にある「点線」はマッカーサーラインであり、漁船操業許可区域として点線を引いていると説明しています。この国会の答弁で言及されている通り、まさに「日本領域参考図」と題された地図が存在しているのです。

 

しかしながら、韓国の東北アジア歴史財団が作成した「日本外務省の独島領有権主張に対する反駁文」の資料にある*「日本領域図」なるものが、インターネット等を通じて世間の目に触れることが多いのに対し、「日本領域参考図」については一部の専門家以外の者が目にする機会は甚だ少なかったと言わざるを得ません。

 

*(注)韓国の東北アジア歴史財団は、「日本外務省の独島領有権主張に対する反駁文」のなかで、『1951年10月、日本政府は対日講和条約に基づいて日本の領域を表示した「日本領域図」を国会衆議院に提出したものの、その地図にはっきりと線を引いて独島を韓国の領域として記した』と主張しています。

 

近年、近隣諸国との領土問題が注目を浴びる中、竹島問題でしばしば議論の俎上に載せられる「日本領域参考図」が、どのようなものなのかを知ることは、外交交渉にあたる者や現代史にかかわる者のみならず、真実を知りたいと願う一般の日韓の市民にとっても、有意義なものだと思います。

 

この地図をこのたびWeb上にて発表・掲載する機会を得ましたので、此処に掲載いたします。

なお、画面を大きくしてご覧になりたい方は、右クリックで「新しいタブで画像を開く」をお試しください。

 

 

「日本領域参考図」 国立国会図書館所蔵 芦田均関係文書(寄託) 380-18

  【全体】

 

f:id:kaiunmanzoku:20160211194959p:plain

 

 

【左上部分】

 「漁船操業許可区域 Area authorized for Japanese fishing and whaling」の一連の文字の一部「漁船操」が見える。

 

f:id:kaiunmanzoku:20160211191020p:plain

 

 

【左下部分】

 

f:id:kaiunmanzoku:20160211194358p:plain

 

【右上部分】

「漁船操業許可区域 Area authorized for Japanese fishing and whaling」の文字が見える。

f:id:kaiunmanzoku:20160211194356p:plain

 

【右下部分】

「母船式鮪漁業許可区域」の文字が見える

「昭和26年8月 海上保安庁水路部 調製」と右下部欄外に記載がある。

f:id:kaiunmanzoku:20160211194359p:plain

 

 

【日本漁業操業許可部分拡大】

国会議事録の中で、山本利寿議員が、「・・・・・線が、竹島の真上を通っておるのであります」と述べているように竹島は漁船操業許可区域を示す線の真下に記されている。

また、漁船操業許可区域を示す点線は、日本海から東は日付変更線(東経180度、西経180度)まで続いており、南は赤道付近まで続いている。

 

f:id:kaiunmanzoku:20160211200611p:plain

 

 

 

この地図の所在調査および公開にあたっては、島根県竹島資料室および第3期竹島問題研究会の委員、国立国会図書館 憲政資料室のご協力と助言を得ました。

 

また、なによりも所有者(個人)様に平成24年11月16日付で

 「1951年10月22日の第12回国会衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 で用いられた資料として、Web上で発表、掲載すること」

 をご承諾いただきましたことを厚くお礼申し上げます。

 

上記の経緯により、画像の無断転載を禁じます。転載希望者は国会図書館所蔵資料規則に則って各自の責任において手続きをなされるようお願い申し上げます。

 

なお、Webのアドレスを用いた引用(画像の所在をご紹介頂くこと)は歓迎します。事実の伝播のため、皆さまのご協力をお願いします。

 

 

19511022日の第12回国会衆議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 会議録

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/012/1216/main.html

上記の会議録中の「日本領域参考図」関連の議事部分の抜粋を下記に引用します。

議事詳細は上記の会議録をご参照下さい。

 

○山本(利)委員 一体條約というものは、最後に條文となつて現われるときにはまことに簡單なものでありますけれども、この條約案をつくるにあたつてのいろいろの根底をなす折衝なりその他の点については、実に厖大なものであると考えておりましたので、私はさような、今後日本が生きて行く上の根本問題と考える人口問題、あるいはその一翼としての移民問題等について、詳しく御調査があり、さらに計画があつて、いろいろ今日までにも連合国の了解を求められておるべきであると考えたから、さような質問をいたしたのでありますが、この点については、今後日本国民の重大な問題でありますから、逐次立案されまして発表せられるように希望いたしまして、この問題は終ります。
 さらに第三條に関連してごく具体的な問題でありますが、今回われわれが参考資料としていただきました「日本領域参考図」を拝見いたしますと、ちようど日本海を通つておりますこの日本の領域を表わします線が、竹島の真上を通つておるのであります鬱陵島は朝鮮にあるいは属するものとしても、竹島は元来島根県の管轄下にありまして、重大なる漁匠をなしておつたのであります。この竹島が、この地図で見ますと、われわれの領土なのか、あるいは鬱陵島に付属して朝鮮等へ移されるものか。これらの点について、島根県民はもちろんこれは日本の領土となつたと解釈しておるのでありますが、この際はつきり御説明を願いたいと思います。
○草葉政府委員 現在の占領下の行政区画には竹島は除かれておりまするが、今度の平和條約におきましては、竹島は日本に入つて来ると申しますか、日本領土であるということをはつきり確認されたものと存じます。
○山本(利)委員 ただいまのお答えを聞いて安心いたしましたが、さらにこういう重要なる委員会に配付されます地図で、明瞭を欠いておると考える点を申し上げたいのでありますが、今日まで再三問題となりました歯舞諸島等が、やはりこの地図では領域外になつておるのであります。千島であれ、あるいは歯舞、色丹等は、当然地図に表わす場合には、わが領土として書き表わしておくということが、今後あらゆる場合に有利なのであつて、それをわが国の手で作成した地図においてもこれを省かれておるというようなことは、まことに不注意千万であると考えるのでありますが、いかがなものでありますか。
○西村(熊)政府委員 御注意申し上げます。それはマツカーサー・ラインでありまして、領土の境界ではございません。御質問は全部お取消しを願いたいと思うのであります。私どもの答弁も速記から取除いていただきたいと思います。そういう疑念を平和委員会で起したということそれ自身、私はおもしろくないと思いますので、お願いいたす次第でございます。
○山本(利)委員 ただいまの西村條約局長のお話を聞いて、私はまことに心外なのであります。この地図を見る者、あるいはこれを受取つた者、これがマツカーサー・ラインであろうというようなことも一応は承知するのでありますけれども、マツカーサー・ラインを示すものということが何ら明示してないのであります。日本領域参考図として配付されたものであります。ただいまの点についての御非難はお取消しを願いたいと思います。
○草葉政府委員 これはごらんの通り漁船操業許可区域でございます。多分黒い線で引いておる点を山本委員はおつしやつておられると思いますが、ここにありますように、漁船操業許可区域としてこの点線を引いておるので、全体といたしましては千島列島として示しておるだけであります。御承知おきを願います。
    〔「それが誤解を生ずるのだ、資料を訂正せよ」と呼ぶ者あり〕
○西村(熊)政府委員 資料の誤りはありません。あれば訂正いたします。

 

 

駐日韓国大使館はその日本語ホームページに2008年7月29日付で韓国の東北アジア歴史財団が作成した「日本外務省の独島領有権主張に対する反駁文」の資料を掲載し、そのp.16に「日本領域図」を掲げ、

「1951年10月、日本政府は対日講和条約に基づいて日本の領域を表示した「日本領域図」を国会衆議院に提出したものの、その地図にはっきりと線を引いて独島を韓国の領域として記した」

と主張していますが、本地図と議事録を照らし合せると、その主張が全くの誤りであることがわかります。

 

すなわち、

1.韓国の東北アジア歴史財団が作成した「日本外務省の独島領有権主張に対する反駁文」の資料に掲載されている「日本領域図」は毎日新聞社が編集刊行した『対日平和条約』(1952)という本の扉にある図であり、上の「日本領域参考図」とは全く違うものであること。

2.地図上の「線」についても、第12回国会では「日本領域参考図」というタイトルの図でそのような線を引くのは誤解を生むという議論があったものの、その地図上にはきちんと「漁船操業許可区域(Area authorized for Japanese fishing and whaling)」と書いてあり、しかも竹島は日本のその線の真下に記されていること。

以上の2点が明確に理解できます。

 

ちなみに、この「日本領域参考図」は「昭和26年8月 海上保安庁水路部 調製」 1/17,500.000 で、緑威東径(Longitude West from Greenwich)10°から緑威西経(Longitude East from Greenwich)18°の範囲を示した地図である。

 

また、ここで話題にしている第12回国会の開かれたとほぼ同時期、サンフランシスコ平和条約署名直後の昭和 26 年 10 月に朝日新聞社が発行した「最新日本全図」に、竹島が日本領と記載されていたことが判明し、この地図を島根県竹島資料室が入手しています。

http://www3.pref.shimane.jp/houdou/files/D9465321-9757-4F75-AA50-06A1C321DACA.pdf

上記の「日本領域参考図」が同年8月の調製であり、本国会討論が10月であることを鑑みると、「日本領域参考図」と「最新日本全図」の二つの地図は平和条約関係国(連合国)の最終交渉の結果あるいは条約締結直後の条約規定の具体的内容を反映した地図であるといえるでしょう。

 

この時期の平和条約交渉の検証については、別項に譲ることとしますが、私の動画 

History - Takeshima / San Francisco Peace Treaty http://www.youtube.com/watch?v=06e0OABi-bQ 

を参照していただければ、1951年4月以降、連合国内の交渉経過で竹島の帰属が議題としてあがっていること、そして、同年7月以降、韓国が「Dokdo」と「Parangdo」は韓国に属すべき島であるとする要望を連合国に対して行っていること、それがゆえに竹島は平和条約で日本領土として返還される領土の確定過程において、連合国内でその帰属がハイライトとして議論されたことがわかります。

その結果、連合国は、歴史的事実と法的根拠に基づき「竹島は過去に南朝鮮として扱われた事実はない。1905年以来竹島島根県隠岐郡に属する日本領である。また、過去に南朝鮮が領有を主張した事実も認められない」と判断します。その見解が、8月に「ラスク書簡」として韓国に渡されるという経緯があります。その同時期の日本で作成された地図なのです。

 

そのことからも、調印前の「日本領域参考図」の調製作業の当時(昭和26(1951)年8月完成以前)には、少なくとも地図の製作に携わっていた日本政府関係者は、竹島は平和条約において「歴史的事実と法的根拠に基づいて日本固有の領土であると連合国に決定されるのであるから、当然返還される」と考え、この地図、「日本領域参考図」を製作したと言えるのです。

このように吉田茂総理大臣によってこの年の9月に調印されたばかりの平和条約を議論している昭和26(1951)年10月の時点で、調印直後の平和条約において「竹島が日本領土であることを否定された」と日本政府が考える材料は全くありません。

それどころか、上記の議事録にもある様に平和条約において竹島は「日本領土であることをはっきり確認された」と政府委員が断言しています。

 

わざわざ、1952年発行の毎日新聞社の本の扉絵に採用されている「日本領域図」なる地図を持ち出して、日本政府が独島を「韓国の領域として記した」と論じるのは、1951年10月という平和条約締結直後の状況を無視した主張と言えるでしょう。

なぜなら、当時の韓国政府は「DokdoとParangdo」を米国国務省に要求している立場として、それらの事実(連合国が日本領である竹島を日本に返還する意向であること)を当然知っている立場なのです。